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『私が彼を殺した』のつづき④ 駿河直之の章

私が彼を殺した 東野圭吾

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その4 駿河直之の章

神林貴弘が美和子の方を向いて、大粒の涙をためていた。
そんな二人を見ると、寒気がした。

穂高誠の結婚式の前日。準子の部屋を出て、自分の部屋に戻った俺は、(P128)披露宴でやる詩の朗読の読み手に電話した。急な話しだったが、俺には心辺りがあった。話しはまとまり、俺は電話を耳に当てたまま、穂高の電話に掛けた。
呼び出し音が鳴っていた。何をしているんだろう。ポケットの中からカプセルを出し、テーブルの上に置いた。すると、受話器から声がした。現実に戻された、穂高の声によって。話しを終えると受話器を置いた。

愛猫サリーが擦り寄って来る。サリーの顔に準子の笑顔が浮かんだ。
「瞼に焼き付けておいてください」(P103)
ひとり呟いた。突然、サリーの顔が醜くゆがんだように感じた。
俺は立ち上がると、部屋の隅に積まれた段ボールを開けた。穂高誠にとって都合の悪い物が詰まった箱だ。探し物はすぐに見つかった。それは小さなビニール袋に入っていた。懐中時計のようなピルケース。袋の中には他にも細々としたわけの分からない物が入っていた。その中に薬瓶があるのに気が付いた。俺は穂高誠のいい加減さにあきれた。ピルケースが入っている可能性は考えたが、薬瓶まで出てくるとは、余程、神林美和子を迎え入れるために慌てたんだな。

毒入りカプセルとピルケース、そして薬瓶。それらはテーブルの上に並んでいた。交互に見ているうちに、考えが浮かんだ。チャンスはそれほどないはず。俺に疑いがかかってしまっては、準子の仇(かたき)をとったとはいえない。
俺は立ち上がると、再び手袋をはめ、靴を履き、玄関を出た。
階段を降り、静かに扉を開け、キッチンを通り抜け部屋に入った。部屋の中は同じ空気のままだった。準子の姿はもう見たくなかった。辛い、辛すぎる。その気持ちを遮るかのように作業に取り掛かった。

(P103)俺はガラス製のセンターテーブルの上にある瓶を持ち、その中の物を小さな袋に入れた。
部屋に戻った俺は、作業に取り掛かった。夢中になった。その間、準子のことを忘れることができた。何を目的にしているのかもわからなくなった。
作業を終えたテーブルの上には、封筒とピルケースと薬瓶があった。俺は封筒とピルケースを明日着ていく服のポケットに入れた。薬瓶と散らかった物は、明日ホテルに行く途中で捨てることにした。
俺にはまだやらなければいけないことがあった。(P129)無意味になるかもしれない将来の穂高の嫁が書いた詩の選択だった。
気が付いたら、外はもう明るくなりかけていた。

ホテルに到着し、(P128)ラウンジに向かった。
それから、俺は薬をすり替えるチャンスを待った。時間は刻々と過ぎていく。ほぼ諦めていたその時、チャンスは訪れた。(P147)雪笹と一緒にいた西口からピルケースを受け取ることができたのだ。俺はその中身を確認した。中身を見て、俺は焦った。ピルケースの中にはカプセルが1個入っていた。一旦、受け取ったピルケースを俺はポケットに入れた。ほんの一瞬で俺は様々な事を考えた。そのまま自分が持っているのは怪しまれる。そして、そばを通り掛かったボーイにポケットからピルケースを取り出し、渡した。その時、雪笹は落胆したように見えた。
俺のポケットにはピルケースの重みがあった。そのピルケースはさっきボーイに渡した物より、ちょっと重い。その中にはカプセルが2錠入っていた。

神林美和子に腹が立った。どうしてピルケースに1錠しか入っていないんだ。(P53)あの時、穂高は2錠ほど入れておくと言っていたのじゃないのか。とにかく、俺はすり替えることをやめた。自分に疑いが降りかかる危険を避けたかった。俺は神林貴弘に掛ける事にした。あいつがやり遂げているに違いない。




準子が死んだ日、3回目に準子の部屋に入った時、俺はビタミン剤のケースに入った白い粉を袋にいれた。自分の部屋に戻り、テーブルを見たとき、毒入りカプセルを戻しておけばよかったと思った。もう、あの部屋には行きたくない。
俺は準子と同じ作業をした。薬瓶に入っていた分だけ、カプセルの中身を白い粉と交換した。テーブルの上には、カプセルがたくさん並んでいた。その中から、2個取り上げ、それをピルケースの中に入れた。そしてさらに1個取り上げ、それを袋に入れ、封筒に入れた。

今になっても、瓶に入っていた硝酸ストリキニーネの量について、警察は何も言っていない。準子の勤めていた病院もわからないのだろう。(P257から推測 病院は時期が分からないとしかいっていない)

加賀は俺を疑った。ある意味間違っていない。
でも、おれは実行しなかった。実行できなかった。おれがやったという点で、あいつは間違っていた。意識を失っている加賀を見た。

ピルケースについていた指紋のことは、おそらく、穂高もどっちが自分のピルケースか分からなかったんだろう。ガラクタと一緒になっていたと考えれば、前の奥さんから直接送られてきた物ではなく、元々穂高の家にあったものと考えた方がいい。ふたつあったピルケースのひとつを俺の部屋に送ったに過ぎないのだろう。そして、あの時、穂高が2錠入っていると言って中身をすてたピルケース。あれが元妻の使っていた物だったのかもしれない。
外見からは区別のつかない同じピルケース。使っている時、お互いのものがカラの時に偶然交換されていてもおかしくない。

穂高誠は死んだ。
神林貴弘は脅迫状のカプセルを持っていた。
いや、奴は他に1錠持っていたんだったな。
神林貴弘が加賀に渡したカプセルが、俺が渡したものだなんて誰にも言わせない。
神林は俺のカプセルを使って、ピルケースのものとすり替えたんだ。

準子の薬を使って、俺が作ったカプセル。
俺と準子が穂高を殺したんだ。
・・・殺したんだ。
・・たんだ。

 

その5 雪笹香織の章

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