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中村文則著「私の消滅」を読んで【ネタバレ・解説・まとめ】

オススメ度★★★★★(1度読んだだけではもったいない。3回は読みたい)

アメトーーク『読書芸人』の第3回企画で取り上げられて、興味を持ったので読んでみました。

このページをめくれば、
あなたはこれまでの人生のすべてを失うかもしれない。

一気に引き込まれる文章で始まる物語。こちらに語りかけているのか、登場人物に語りかけているのか、それはすぐに判明するが、謎を知りたい好奇心から読み始めたら止まらない感じ。

感想を書きたいと思うけど、少しでも内容を知ってしまうと魅力が減ってしまうと思う。

何度か読み返したくなる作品。
ただ、精神的に弱いときに読むと、辛くなると思う。

読んだ人と、ネタバレしてもかまわないという人だけこれ以降を読んで下さい。


ネタバレ注意

 

登場人物にまともな人間はいない。

」が小塚亮大と入れ替わろうとするところから始まる。

」とは誰なのか。「小塚良大」とはどんな人物なのか。

章は「数字・*(手記1の中は除く)」の現実(嘘なし)と、「手記、手紙、メール」など小塚の意思(嘘もある)で構成されていると思われる。

数字の章については、
僕=間宮、男=和久井、医師=小塚亮大 で話が展開する。
7~10章については、12章から催眠を受けた間宮が小塚として語っているものとわかるので、嘘が含まれる。

虚偽と真実が入り交じる物語。読んでいて訳がわからなくなる。何が本当で、何が嘘だったのか。

理解しようと、まとめたりしてみました。
思いついたことを、迷ったりしながら書いているので順序はバラバラです。
書いているうちに考え方がかわってもいるので、変な部分もあるかと思います。

間宮に読ませた手記から分かる小塚亮大

小3

クラスメイトの妹が殺される どうやったの?クラスメイトの仕業と思い聞く
妹が小塚に叩かれた、と嘘をつき、祖母が定規を使って説教するまねをした。
崖の上、妹をびっくりさせようとする。
頭の中。緩く絡まりながら伸びていく黒い線。
妹が崖から転落。
アニメの声(でも誰かが落としていたはず)(落としたのがもしきみでなかった場合、きみの人生はもっと厄介なことになる)
妹は無事だった。事故として処理された。
祖母は体調を崩す。
父の怒りは母の顔に手をだす。
母 両親の死んでいる故郷へ。スナックで働く。酒に頼る(母の父酒飲み)
母 男に殴られる。(性行為が伴う)

●小4

母の男は自分にも力を振るった。
夏休みの晴れの日。短いスカートの女性。太ももに興奮。足にぶつかり、精通。
精神は禁欲。

●小5

母から関係ないことで叱られた。(起きるのが遅いこと、勉強だけはできるみたいだがもの忘れが酷いこと)
声を止めさせるため、軽く押した。母壁にぶつかった。
母は暴力を止めさせるため、性に誘う情動があったのかもしれない。それを反射的に自分に向けた。
自分でもコントロールできない性を母に向けることはできなかった。
全てを塞がれた小塚は、台所の戸棚の板を台所に振り下ろす。
黒い線 先が枝分かれし迷うように広がっていく。p26
母に破片が飛び額から血を流す。
母が通報。
情緒が不安定と判断され、児童自立支援施設に送られる。
内面を修理。
(吉見に母を陵辱したという催眠を掛けられるp154)
母が受取を拒否。
別の大人に引き取られるまで、児童養護施設。p27

ここまでが手記の内容

小塚亮大自身の告白なので、嘘もあるかもしれないし、吉見によって記憶を操作されている可能性がある。真実かどうかはわからない。
唯一、母を陵辱した記憶を植え付けられたことは判明し、そのせいで性不能者になっていたことは真実だろう。


僕のことを語る

7~10章で間宮が小塚に催眠をかけられて、告白したと思われる文章。(手記にもなっているp150和久井のセリフから)

ここでの嘘は、ゆかりとセックスしたということ。

間宮を性に目覚めさせたのは

間宮を女性を虐げることに不安と興奮を覚えさせたのは、小塚亮大だった。
小塚亮大が妹を崖から落とし、幼少期の間宮がその妹を発見した。そして、性に目覚めた。

その後、小塚が思いを寄せていたゆかりを陵辱し、自殺に追い込んだ。

なんども描写される木々が揺れるという記述。その度に小塚の妹を発見したことを体が思い出したのではないだろうか。

どうしてゆかりの治療に夢中になったのか

ゆかりの治療に、母を治したかった思いを重ねた。

ゆかりの治療中、何かしらの影響を与え、自殺衝動を手首を切るから、首を吊るに変えてしまった。(どこかで描写あったかな)

なぜゆかりが和久井を好きになったのか

小塚が掛けた催眠の中で登場した架空の昔の彼氏。その彼が似ているとした俳優に、和久井も似ていたp166

ゆかりへのECT

母を治したかった思いが、ゆかりに過剰なECT治療をさせた。p127、p131
「私も思うんですよ。あなたがゆかり……さんを追い詰めたんじゃないかと」p128
ここのゆかりに置き換えることもできるだろう。


小塚の悪

妹を崖から落とした(触れただけだが)
木田を殺人者に変え、自殺させた。
間接的に間宮に、女性を虐げることに不安と興奮を覚えさせた。そして、自殺させた。

悪とまではならないが、
ゆかりを抱けなかっため、ゆかりを傷つけた。
ゆかりにECTを施すが、記憶喪失にまで追い込んでしまう。(ゆかりを抱けなかったのも理由のひとつか)

小塚への同情

性的に問題がある家庭に育った。
小学5年のとき、吉見に催眠を掛けられていた。
治療しようとしたゆかりを自殺で失った。

吉見の悪

ある男性の処方をおろそかにし、通り魔事件をおこさせてしまった。
小塚が訪ねて来る度、患者のように迎えた(小塚が吉見と会う度)→催眠を掛けた少年の成長を楽しんだ。
ゆかりに自分が犯す催眠を施した。
小塚が母を襲ったと催眠を施し、性不能者にした。
ゆかりを小塚に紹介し、恋愛感情を芽生えさせ抱けないことを楽しんだ。
小塚(小学5年の時)の治療をしなかった。
間宮、木田にゆかりを襲わせるきっかけを作った。


 吉見のカウンセリングを受けてから

カウンセリングを受けたのは、妹を崖から落としたり、母を襲った(吉見から植え付けられた)時の、自分の中に眠る悪のエネルギーに満ちるためだった。
しかし、そうはならず小塚は冷静になった。
「死への興味を失っていた。二人を殺すことにも、あまり興味がなくなっていた。それよりももっとするべきことがあった。」p118
この文章の後に、二人に自分の人生を埋め込むとあるが、実際はコンプレックスを取り除いた人生を埋め込んだ。

小塚にとって、「それよりももっとするべきことがあった」こととは

1. 自分の人生からコンプレックスである性的不能を取り去った場合、ゆかりを失ったことはどういう結果をもたらすのか、を知ること。
2. 性的不能の原因を作った吉見への復讐。
3. 宮内、木田への復讐。

順位を付けるとしたら、こうではないだろうか。3.の二人を殺すことは「それよりも」のそれなので含まれないけど一応。

洗脳の目的

吉見に催眠を施されるまでは、木田と間宮を小塚亮大にして、同じ苦悩をさせ自殺に追い込むことだった。

小塚の苦悩の根源は吉見にあることを見抜き、性的不能者は意図的にされたと知った。
手記に書かれなかった母への陵辱(吉見に植え付けられた嘘の記憶)
ゆかりを何度も抱こうとしたが失敗したこと。
性的不能者であったこと。

これらのことを二人に洗脳する際、偽った。

そして、これらのコンプレックスを持っていない小塚(間宮)を作り上げた。
結果、コンプレックスを排除した小塚亮大(間宮)は自らを自殺に追い込まなかった。

「14」p132からは自殺に必死に抵抗する間宮を小塚と和久井が小塚にするために洗脳しているというよりも、自殺に追い込むための洗脳をしていた。


吉見の殺害

性的不能の原因は、幼いころ治療をした吉見によるものだった。
小塚亮大は吉見の呪縛に囚われながら成長し、吉見の策略でゆかりと出会い、そして喪失した。

小塚の奥に眠る、幼いころの悪。それを呼び起こそうとした吉見。
催眠の時に使ったボイスレコーダーによって、全てが吉見の仕業と理解することができた。
もし間宮と木田を当初の目的通り洗脳して殺したなら、最後まで吉見の思う壺だった。

吉見の殺害は、性的不能の原因を作り、その後の辛い人生を歩ませたことへの復讐。

私の消滅

小塚はささやかな願望を記した紙を用意して自らECTのスイッチを入れるところで、物語は終わる。
読み終わった時、まさに「私の消滅」だなぁ、と思う。

しかし、小塚もECTにスイッチを入れる前、上手くいくかどうかはわからないといっている。
上手くいかなかった場合、上手くいっても記憶が戻ってしまった場合「私の消滅」といえない。

私の消滅とは、幼少期に吉見に洗脳され、まっとうな感覚を消されたその人生の欠落のことではないだろうか、と思う。
小塚は歩めるべき道を歩めなかった。すでに消された過去の私。

無事、彼はECTによって記憶喪失になり、ささやかな願望を実現できたのだとしたら、うれしい。

終わりに

登場人物は少ないのに複雑に絡み合った人間関係。順序を崩してあるので解釈するのが難しい。
読み方として1回目は大枠を掴んで、2回目にいろいろ発見して。3回目に理解する。そんな本だった。
人はいつどこで、誰かに影響を与え、影響を受けているのかわからない。

この本のような悪い影響ばかりが広がっていくのではなく、いいことが伝播していくような世の中になるといいなぁ。

小塚の妹はどうなったのだろう。

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